フランス語の世界へようこそ!
泉谷安規
いま、「ようこそ」と書きましたが、実は皆さんとフランス語とは、これがはじめの出会いではなくて、皆さんは英語と同じように、これまですでに日常生活のなかでフランス語の世界に触れていて、充分に慣れ親しんできているのです。知ってました?あいさつの「こんにちは(Bonjour、ボンジュール)」をはじめ、「グルメ(gourmet)」や「ケーキ屋さん(pâtissier、パティシエ)」、また「モード(mode)」や「プレタポルテ(prêt-à-porter)」などの、これらのフランス語はどれもこれもすでにテレビやパソコンなどでおなじみの言葉で、すでに皆さんもご存知と思います。このように、フランス語は日本語のなかにすでに入ってきて定着していて、わたしたちはそれをなにげなく使いこなしているのです。これから、そのようなフランス語を、皆さんに紹介していきたいと思います。
弘前大学へ入学して、21世紀教育のなかで、多言語コミュニケーションをこれから受講する皆さんは、ドイツ語、フランス語、中国語、朝鮮語、ロシア語のなかから一つを選んで履修することになりますが、どの言語が易しいとか難しい、単位がとりやすい、といったことは一切ありません。それぞれの言語には固有の特徴があり、またそれを学ぶうえでの苦労はどれも変わりません。皆さんの志望動機や関心に合った言語を選択してください。
フランス語にしてもしかり。フランス語を学ぶ上での最大のポイントは、「動詞」をいかに克服するかです。現在形で、一つの動詞の変化(活用)に対して、フランス語では六通りの変化があり、それをいかに覚えるかが最大の重要課題です。英語が一つか二つの動詞変化に対して、六通りの変化とは!と最初は戸惑うかもしれませんが、心配はご無用。いったんこの変化パターンを覚えてしまえば、規則動詞や不規則動詞といったフランス語のすべての動詞に臨機応変、対応可能です。むしろ、こうした六通りの変化によって、それがどのような人称の動詞変化であるのかが逆にはっきりと特定できるという利点があります。また、単語についていいますと、フランス語の単語では、つづり字と発音の関係が明確に決められています。あるつづり ――例えば、《ai》と書いたならそれは「エ」と読み、それ以外には読まない―― といった、厳格な取り決めがあります。こうしたつづり字と発音の対応関係を覚えたなら、鬼に金棒、どんなフランス語の単語(意味をまだ知らない単語)でも読みこなすことができます。ちなみに、単語に関していえば、日常生活に必要な語彙数が、英語に比べてはるかに少ないのもフランス語の特徴といえます。
最後にフランス語の成立過程について歴史的にみていきますと、フランス語は古典語のラテン語が俗化(口語化)してできた言語です。他に同じようにしてできた言語に、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語などがあります。したがって、いったんフランス語をマスターしたならば、こうした他の言語を習得しようと思えば、それは一から始めるよりも、はるかに簡単な作業といえます。なぜなら、こうした言語は、フランス語と同じラテン語系列に属する言語、いわば方言みたいなものですから。実際、弘前大学の学生の中には、フランス語を足がかりにして、その祖先の言語であるギリシア語やラテン語、また同じ系列に属する言語をマスターしている人もいます。そして、フランスをはじめとして、ルーマニアへ留学している人も毎年、何人も出てきています。
いかがでしたでしょうか。皆さんもこのようなフランス語を学んでみては?そしてそれを糧にして、あの広い国際的な世界へ羽ばたいていってください。