きっかけ、継続、実践
丸山幸江
約6年前、あるフランス人のご家族と知り合う機会があり、奥様のご友人や職場の方に書道を教えることになりました。当時三沢周辺にかなりの数のご家族が住んでおり、生徒数60名以上の小・中学校もありました。大人のクラスをはじめて1年後、学校で日本の文化を教えることになりました。(日本語・おりがみ・書道・各種行事等)しかし、毎日のようにフランス人と時間を共有しているにもかかわらず私のフランス語はあいさつの域を出ることはありませんでした。
例年通り新しいクラスがはじまった2年前の秋、私の中である思いが湧き上がりました。いつものようにデモンストレーションを終えるとマダム達のおしゃべりがはじまりました。(これは世界共通なのですね)別に今までとなんら変わらぬ光景です。当然のことながらフランス語で交わされる彼女たちの会話は全く理解できません。『口より手を動かして!』と心の中で叫んだ後、ふと、この会話を理解し、私も仏語で彼女達とやりとりができたらどんなに有意義なことだろうと思ったのです。とはいえその時初めて仏語を勉強しようとしたわけではなく、それまでの数年間に買いためた教材は数知れず、ちょっとしたテキストコーナー並みの自慢のコレクション(?)の中から文法中心の問題集を取り出してa・b・cからはじめました。少しわかってくるとおもしろく、ラジオ講座・テレビ講座を聞いたり見たりしているうちにやる気がでてきました。しかし現実は厳しく、“通じればいい”と開きなおりながら無駄な抵抗を続ける日々。そんな中、仏語特有のRの発音練習に凝った頃がありました。暇をみつけてはR、Rとやってみますが全くのどの奥がふるえません。それどころかのどがからからで痛くなってしまうことも・・・。ある日、これならうまくいくかもと思われる練習方法を発見。温泉に行ったとき、高い位置から落ちてくるシャワーにむかってうがいをするようにRを発声してみました。奇妙な声が周囲に聞こえる心配もなくR、R、Rと続けます。しばらくして気がついたらたまにRの音が出るようになっていました。こんな些細なことが勉強を継続させる原動力となるのですね。しかし、ただ勉強をするだけではつまらない。自分の言葉がどれ位通じるのか、又上達しているのかを知りたいというのは語学学習者なら誰でも思うことでしょう。幸いにも私には日本にいながらにして日常フランス人の方々とおつきあいできるというすばらしい環境にあります。この機会を無駄にすることなく交流の場を少しでも広げていきたいという思いです。
フランスに帰った生徒が学校で書道を紹介することがたまにあります。その時は半紙や道具・手本等を送ったりしますが、いつの日か生徒の学校を訪れいっしょにできればどんなに楽しいことでしょう。来るべく日に備えて悪戦苦闘は続きます。
左:マダム達
右:第五中学校の生徒達
下:文化祭の写真