青森県日仏協会

松山和子

 この町の人はかなりの"フランス好き"らしい。市の観光案内所を訪ねると、「洋館とフランス料理の街」なるコピーを掲げたポスターに出会い、街を歩けばフランス語らしき単語の刻まれた看板が目につく。ソムリエやら、パティシエやら、今をときめくフランスの食文化にも敏感で、老舗のカフェやフランス風のビストロには紳士淑女が集い、フランスさながらお喋りに興じる姿も珍しくない。

於 藤崎町佐藤邸  そんな弘前在住の"フランス好き"が中心となり、県民レベルでフランスとの文化交流を図ろうと、20年前に発足した会がある。それが、現在86名(法人を含む)の会員数を数える『青森県日仏協会』だ。"フランス好き"は往々にして"変わっている"。それ故、時に"変わり者"などという最上級の誉め言葉まで賜ることもあるのだが、そんな人々の集まる『青森県日仏協会』とは、一体いかなるものなのか?

 当協会では、年に数回、県内在住のフランス人たちと交流会を開いている。そこで何をするかというと、その年によっても違うのだが、春には花見、秋には紅葉狩り、ある時は茶道や華道に勤しみ、またある時は焼物を愛で、共に食卓を囲み、ワイン片手に各々の文化や習慣について語り合い…。要は、遊ぶことを愉しむのである。そしてこの交流会こそが、フランス人と直接触れ合える絶好の機会であり、大学で学んだフランス語を実践できる貴重な場でもあるので、フランス語を学んでいる学生諸君には是非一度参加することをお勧めしたい。その他にも、修学旅行と称してやって来るフランス人高校生のホームステイの受け入れや、フランスから劇団や楽団を招き入れ、この地で発表の場を設けるなどの交流も行なっているので、そのような機会を通して、教科書には載っていない"生のフランス"を知ってもらえたら幸いである。

 さらに、当協会を支える会員に言及すれば、皆実に個性豊かだ。音楽、美術、文学、映画、食、ワインetc.に対する造詣も深く、単なるミーハーの域を遥かに超えた、"フランス通"が多いことに驚かされる。そんな彼らの独特の視点で語られるフランスは、何ともユニークで面白い。そこに広がる世界は、我々日本人の慣れ親しんだハリウッド映画やマクドナルドのハンバーガーとは一味も二味も違う、洗練された、官能的で繊細な味わいに溢れている。一度味を占めたらやめられないのがフレンチテイストだ。好きになれるかなれないか、試してみる価値はある。

東奥義塾で書道の体験  『青森県日仏協会』の活動等に関しては、県の国際交流協会のサイトから当協会の紹介ページ*1 にアクセスできるので、そちらをご覧いただきたい。願わくは、フランスに出会うことでアメリカ以外の外国にも目を向け、英語さえできれば十分だなどと決めつけず、もっと広く外の世界を知ってもらえたらと思う。グローバル化という名の下に画一化されて行く世界の中で、違うことの素晴らしさに気付き、互いの個性を理解し尊重し合えたら、人生はどんなに豊かで味わい深いものとなるだろう。

*1 青森県日仏協会 « 財団法人青森県国際交流協会