新年は聖人カレンダーで!
工藤貴子
2008年も残すところあとわずかとなってしまいました。みなさん、来年のカレンダーは準備しましたか?
こう見えて(見たままか?)せっかちな私は、早くも10月中にお気に入りの一品をさくら野で見つけてゲットしました。これ以上気に入るものは暮れまで待っても出会うはずがない!と思うほど、「カワイイ」のツボにはまったカレンダーだったからです。それは、フレンチ雑貨が好きな友達を通して知った、フランスのポスター作家エルヴェ・モルヴァン Hervé Morvan のもの。12ヶ月が一目でわかる、それ自身一枚のポスターのようであり、モルヴァンのなんともいえない愛らしいイラストが一度に何枚も楽しめる。ああ、早く来年にならないかなー♪
モルヴァンに勝るとも劣らない人気を誇るのが、レイモン・サヴィニャック Raymond Savignac。彼のポスターをモチーフにしたフランス製のカレンダー(下の写真:Editions Clouet社 2005年版)を、何年か前に渋谷で見つけて衝動買いし、なぜか(たぶんサヴィニャックを紹介したい一心で)妹にプレゼント。きょとんとしつつ、KYじゃない愛しの妹は「あ、あ、ありがとう(汗)!」と、その場で中を開いた。そこで一言:「コレハナニ?」
姉は答える:「セイジンノナマエダ。」
妹は繰り返す:「セイジン?」
このとき妹の頭に浮かんだ漢字が「成人」だったのか、「星人」だったのかは知る由もありませんが、とにかく、妹の目に飛び込んできたのは、365日すべての日付の下に書かれてある Florence, Gatien, Pierre などの「聖人」の名前だったのでした。(注記。「聖人」と正しく変換していた可能性も十分あり。妹の名誉のために書き添えておきます。)
「聖人」として私たちに一番馴染み深いのは、やはり聖バレンタインでしょう。キリスト教の教えを守り、殉教した十二使徒ももちろんそうです。また、病気の治癒や豊穣といった私たち人間の願いを天に取り次ぎ、その身と引き換えに奇跡を起こした人も聖人として認められます。そして1年365日、毎日がそのいずれかの聖人の祝日として名前が記されているものを「聖人カレンダー」と称しています。
たとえば、この原稿を書いている12月13日があなたの誕生日だとしましょう。聖人カレンダーのこの日には“Lucie”という名前が記されています。この聖女リュシー Sainte-Lucie があなたの守護聖人、つまりあなたを守ってくれる聖人なのです。また、全国のリュシーさんはたとえ誕生日が12月13日でなくても、この日には「今日はあなたと同じ名前の聖人の日ね」と、お花やちょっとしたプレゼントを親しい人から贈られるといううれしいサプライズも経験するでしょう。
そういえば、友達6人との初パリ旅行で泊まったホテルは、サン=ジャックSaint-Jacques 通りにありました。その中の一人が行こうといったアニエス・ベーの近くにはサン=トゥスタッシュ Saint-Eustache 教会があり、フランスのカラフルでオリジナルな文房具に開眼したのは、サン=ミシェル Saint-Michel 大通り沿いの大型書店でだった。自分でも気づかないところで、私は時空を超えてたくさんの聖人(Saint/Sainte)とすれ違っていたのであり、同時にこの聖人信仰というものがいかにフランス人の生活や精神に密着したものか、聖人カレンダーを通していまさらながら気付いたのです。
さあ、こうなると自分の守護聖人がだれなのか、知りたくなってきませんか?
聖人カレンダーを見たくなったら、こちらをクリック!あなたの守護聖人がわかります。因みに、カレンダーの下のニッコリマークをクリックするとその日のジョーク話が読めます。
自分の守護聖人がわかったところで、いったいその聖人はどんな人だったのか知りたい!そんな好奇心いっぱいのあなたは、こちらへ。これによると、私の守護聖人である聖オデットSainte-Odette は、ベルギーの由緒ある家に生まれた高貴なお方。しかし、自分の意に反する結婚式から逃げ出し、「私の愛と信仰はイエス・キリストに捧げる」と宣言。そして、自分の“美貌”によって求婚者が絶えないのだと悟り、自ら鼻を切り落として修道女になったのだそう。うーん!なるほど、やっぱりそうだったのか!!(なにが??)
というようなことが、フランス語で書かれています。語学力のブラッシュ・アップになるので、辞書を頼りに果敢にチャレンジすることをお勧めしますが、暮れも押しせまって忙しい人は『バースデイ・セイント』(鹿島茂 著/飛鳥新社 刊、1575円)が手っ取り早い。一日、つまり一聖人に一ページ割き、その日の守護聖人の伝記はもちろん、どんな分野の守り神か、その日に生まれた人の性格や傾向、贈り物をする場合のヒント、そしてこの日に生まれた有名人の名前まで、日本語で詳しく説明しています。ただし、この本にも明記されていますが、一日に割り振られている聖人は一人とは限りません。解釈や国、また宗教的立場から、同じ日に15人の聖人がいるという場合もあるので、上記のサイトのカレンダーとこの本の守護聖人が一致しないこともあります。フランス語の腕に覚えがある人は、やっぱり両方読んでみましょうね。
来たる2009年、どんな年になるでしょう。今年はなんだかツイてなかったな、と思った人、来年は守護聖人と一緒です。安心して新しい年を迎えましょう。逆に、ツキまくってた今年の揺り戻しが怖い人、やっぱり守護聖人があなたの幸運を守ります。こうしてフランス人も一年一年を積み重ねていくのでしょう、《Bonne année!》と言い合いながら。
Je vous souhaite une très bonne et heureuse année!
追記 :『バースデイ・セイント』を私に教えてくれたSちゃん、ありがとう。この本を見せてくれたのは、お互いの家を行ったり来たりして、一緒にフランス語を勉強した時期でしたね。
何年も前のサヴィニャックのカレンダーをいまだに保管してくれていた妹よ、ありがとう。
(文責・工藤貴子)