!今月のオススメ!
工藤貴子
『フランス語で広がる世界-123人の仲間』 (駿河台出版社, 1500円) 立花英裕・井上たか子監修/日本フランス語教育学会編 |
次の3つの質問に答えてください:
- 子供の頃なりたかった職業は?
- いまのあなたが目指している、または憧れている職業は?
- フランス語を使う職業といわれて思い浮かぶものは?
誰かが言っていた、国の名前に「お」が付くのはフランス以外にはない、と。そういえば「おドイツ」とはだれも言わないし、「お中国」と聞いたこともない。日本人の関心がこれだけ多く向いているアメリカのことも、「おアメリカ」とは呼ばない。やっぱり「お」ふらんすなのだ。しかもひらがなで「おふらんす」。
確かにこの本 『フランス語で広がる世界-123人の仲間たち』 には、かつて「おふらんす」そのもの、またはかの地の文学や美術、音楽、映画に憧れてフランス語を始めた志の高い人々や、家族などごく身近な人のフランス趣味に影響を受けたという出自の確かな人々、そして家族の仕事の都合などでフランス語圏に滞在経験があったり、小学校からフランス語の授業があった(首都圏にはこのような学校が少なからず存在する)というラッキーマンが数多く登場します。こういう人たちが、フランス語を駆使しながら世界をまたにかけて活躍するというのも、むべなるかな。
ここまで読んで「なーんだ。」または「やっぱし。」と思ってしまったアナタ、お待ちなさい。この話にはまだ続きがある。
この123人の中には、我らが弘大生と同様「第二外国語でフランス語を選択した」ことをきっかけに、フランス語ワールドに足を踏み入れた人も数多く存在します。月400円以下のテキスト代だけで済む、NHKフランス語講座でコツコツ勉強したという人も。そして、全然しゃべれなかったけど、とにかく現地に行ってみたという人も。また、こうした人たちが活躍するのは、先述の文学、美術など「想定内」の分野にとどまりません。報道やマスメディアの特派員、スポーツ指導者(野球・スキー・剣道など)、医師(ちなみに国境なき医師団の創設者はフランス人)、地方公務員、それに音楽ジャーナリスト(ワールドミュージックというヤツらしい)まで、実にさまざまです。この本が他にも「国際協力」「国際結婚」「科学・テクノロジー」「旅」「文化交流」などなど、16もの章から成り立っていることも、フランス語の世界は広く、そして深いということを証明しています。
家庭環境も、始めたきっかけも、フランス語歴も、よくぞこれだけバラバラな123人を集めたものだと、読んだ私は心から感心しているのですが、バラバラな人たちが声をそろえて言うことが一つだけあります。外国語を学ぶということは、一つのものを別の角度から見ることができるようになる、ということです。それは、日本人としてのものの捉え方に縛られて、なんだか窮屈だなと感じたときに、ひょっとすると私たちの心に風穴を開けてくれるものかもしれない。フランコフォン(フランス語圏の人たち)ならこう思うかも、事実こうアドバイスしてくれた、そんな新しい視点を持つことは自分を自由にしてくれる。だったらまず英語圏人の視点を、それでもいい。でも、「もう一つの目」は多ければ多いほどいいに決まっている。だからでしょうか、この本に登場する人たちはみな、視野が広がったせいか、どことなく楽しそうです。
フランス語の授業も折り返し地点を過ぎて、次々出てくる文法の規則に、まだまだ馴染めない厄介な発音、ぼちぼち「ああ、フランス語って・・・」と思っている人もいるかもしれません。わかります。私も通ってきた道ですから。何度この道を往復したことか・・・。そんな今だからこそ、冒頭の質問への答えを考えてみては?あなたが挙げた職業が、この本の中に登場するかもしれません。124人目の仲間はあなたかもしれない。
ちなみに、私の答えは:
- 童話作家。小学校の卒業文集に、ハチマキ姿で耳に鉛筆をさしている自画像を書いた。あれじゃ競馬の予想屋だった(汗)。
- とにかく人の役に立つ仕事。
- 大学生のころは、仏文学の研究者、翻訳・通訳者、フランス語圏の報道特派員くらいしか思いつかなかった。あの時、この本があればなー・・・。
(文責・工藤貴子)
追記:この『フランス語で広がる世界』は、6月中旬以降、付属図書館に配架される予定です。
※6/17より配架されています。(7/17追記)