アガディールの記憶

1960年2月29日午後11時40分。
マグニチュード5.7の揺れが、モロッコ南西部の町・アガディールを襲いました。
当時の人口の3分の1である1万5000人が死亡、2万5000人以上が負傷しました。
15秒間続いた揺れは建物を倒壊させ、地割れや津波も引き起こし、町は壊滅状態になりました。


(左)地震発生直後の様子(Memoire d’Agadir提供)

(右)被害の少なかった空軍基地で被災者を受け入れる様子(同)


翌朝には、当時の国王モハメッド5世のもと、救急隊が編成され、活動を開始。 それから50年以上の時が経ち、アガディールは現在、国内有数のリゾート地となりました。
避暑やバカンスのため、年中を通してヨーロッパなどからの観光客を受け入れており、明るく開放的な町は、ここがイスラム教のモロッコであることを忘れさせるほどです。



そんな大震災の記憶を伝えようと、町には小さな博物館があります。
博物館の名前は、「Mémoire d’Agadir(アガディールの記憶)」。
大震災前後のアガディールの街並みの写真や当時の新聞記事、被災者から寄せられた証言などが展示されています。




「いまだに眠るときはいつも戸を開けたままにしている」
「アガディールを離れて、もう何年も戻っていない。戻るのが怖い」
証言には、そんな悲痛な叫びがおさめられています。

博物館の方が言った、「アガディールはまだ復興の途中です」という言葉が忘れられません。
小さな地震は今もたびたび起きており、過去の経験を活かし、防災への関心が高まることを願うばかりです。




2017年5月28日