RICHEの意味

まだモロッコで暮らし始めて日が浅いころ。
お札を持ったモロッコ人が「これを両替してくれる?」と私のところに来たことがありました。
あいにく持ち合わせが十分でなかった私は、「ごめん、持ち合わせがない」と言ったあとに、冗談のつもりでこう続けました。
<< Je suis pas si riche pour le moment. >> (今はそんなにお金を持っていない)
すると、そのモロッコ人は真顔になってこう語り始めました。
「RICHEとは、お金を持つことを意味するのではない。自分はお金をたくさん持っているわけではないけれど、愛する家族がいて、生きる喜びがあって、毎日とても充実している。だから、私はRICHEだ。どんなにお金があっても、それだけでRICHEにはなれない」
英語のRICHに比べて、フランス語のRICHEにはお金持ちという意味合いより、心の豊かさや恵まれている、といったニュアンスのほうが強いのは確かです。
そういう意味で、英語につられて単語を使ってしまった、という思いもありました。
しかし、一番強く感じたのは、モロッコ人の持つRICHEへの価値観です。
このあと、別のモロッコ人にも意味を訪ねてみましたが、答えは同じ。
自分は外国人が「豊か」を「金持ち」の意味で使っていたとしても聞き逃してしまうかもしれない、と思うと、よりモロッコ人の考え方が伝わってくるような気がします。


2016年1月26日