風情溢れる石場旅館

弘前大学人文学部欧米文化コース3年 菊池つづら


  平成27年5月27日、青森県弘前市、弘前公園の近くに佇む石場旅館に取材を行いました。取材の目的は、弘前とフランスのつながりを見つけ、皆さんに驚きと感動をお届けすること!不安と緊張の中、私たちは、旅館のオーナーの石場創一郎さんの元を訪れました。

 石場旅館は、明治時代から続く老舗旅館で、平成20年に弘前市の「趣のある建物」に認定され、その3年後には国の「登録有形文化財」に指定されるなど、その魅力は多くの人々から認められています。石場旅館とフランスのつながりはどこにあるのかと疑問に思った方がおられるかもしれません。実は、意外なところにつながりは隠れていました。
そのつながりを解き明かす鍵は、4代目オーナー、石場創一郎さんにあります。石場さんは弘前市に生まれ、関東の大学に進学後、大学の先生の勧めでフランス語検定を受験し、大学2年生の頃にはフランス語検定2級を取得しました。同様に、高校生の頃は英語検定2級も取得し、2つの言語を話すことができました。もともと好きだったフランスの音楽や映画などをきっかけにその実力はぐんぐんと伸びていったようです。
大学卒業後は、そのまま関東に就職。最初の就職先であるクラッシックの音楽事務所には1年半ほど勤務し、そこではフランス語を使う機会もあったそうです。その後は、学術研究助成を行う公益法人に勤めたそうです。そして、10年ほど前に弘前に戻り、家業を継ぎ現在に至ります。


私たちは、この石場旅館に訪れる外国人観光客について聞きました。これまで訪れた外国人観光客は、フランスをはじめ、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、アメリカ、中国など数多くの観光客が宿泊しに来るそうです。また、長期休暇期間やねぷた祭り期間などは、宿泊者がほとんど外国人になることもあるそうです。石場さんは、接客時、特に外国人観光客に対し、自身の語学力を活かし会話により関係をより深めているそうです。石場さんは、日本人観光客と外国人観光客とでは、旅館に求めるものに違いがあると考えています。日本人観光客は、設備面を重視して考え、文化財などの古い建物に知識が乏しいため、旅館のスタッフからの説明を求めるそうです。それに対し、外国人観光客は、事前に建物のリサーチをしているため、知識は多く、旅館の人とのコミュニケーションやおもてなしを重視していると考えます。
ホテルと違い、旅館はお客様と接する時間が多く、「スタッフも家族と一緒にいるような気持になる」と語った石場さんは、観光客とのコミュニケーションを一番大切にしています。

そんな石場さんは、観光客へ弘前市民との交流の場の提供も行っています。旅館の朝食・夕食の有無の選択肢を増やし、もし旅館で食事をしない場合は、石場さんのオススメの地元のお店に連れて出かけるそうです。それにより、地元の人々も外国人と交流するきっかけにもつながり、新しい国際交流の場へと繋がります。  昔から海外旅行が好きだった石場さんは、最近では仕事の都合上なかなかいくことができないそうです。しかし、旅館にいると色々な国から人々や情報が集まってくるので、「自分も海外にいるような気分になれる!」と話していました。私たちが取材に訪れた日も、フランス人やミャンマーで支援活動を行っている日本人などが宿泊しており、実際にお話も聞くことができました。

ホテルなどの口コミ情報を掲載する情報共有サイト「トリップアドバイザー」で、石場旅館の口コミは世界中へと広がり多くの人々が集まるようになりました。石場さんの高い語学力とコミュニケーション力は、高く評価され、特に外国人観光客から多くの口コミが寄せられています。”Great Service, Great Host”、”Warmest hospitability”と、石場さんやその家族のおもてなしは、多くの外国人観光客の心を惹きつけ、「素敵な弘前の思い出、日本の思い出」となり彼らの心の中で生き続けています。

取材を通し、私たちも石場さんの温かさに触れることができました。そして、その魅力を今後も多くの人々に伝え発信し続けていきたいと思います。
「弘前と世界を繋げる旅館」是非一度、訪れてみてはいかがでしょうか?

(参考URL) 石場旅館HP